――― 神楽坂という街に対して、どんな印象をお持ちでしょうか。
古い街並みが残るとともに、日仏学院などがあり、外国人も多い。 洋と和が混在する街だという印象があります。昔からこの界隈はよく訪れましたが、 30年前に老舗の商店だったところが、今ではマンションになっていたり、 街を歩いているとマンション反対の貼り紙が目に付いたりします。 極端な話、昨日見た家がもう更地になっていたりということがある。 年齢を重ねて、ゆっくり歩くようになったことで、今まで見えなかったもの、そういった街の変化などが見えてくるようになりました。
――― なぜ神楽坂を舞台にドラマを書かれたのでしょうか。
フジテレビから次の企画をと言われたとき、最初に神楽坂のことを考えました。 この街ではKCIA(神楽坂CIA)だとか、噂の速度が時速60キロだなんて話が出るくらい、 人と人とのつながりが緊密で、面白い街だと思っています。
――― 今回は一気に脚本を書き上げたそうですが……
早く書かなくては、街がなくなってしまう、変化に追いつかないという気持ちがありました。
――― 作品の中で「手紙」というものが重要な意味を持ってきそうですが、倉本さんご自身はご両親に手紙などを書かれましたか。
自分では、まったく親に手紙というものは書いたことが無いです。手紙というもの自体、あまり書かない方です。しかし、以前の『前略、おふくろ様』で母親というものを描いたんですが、最近になって今度は父親について語りたいという思いが湧いてきました。母親だけ描いて父親を描かないのは、片手落ちだという気持ちもありますが、自分自身、父親から無形の遺産を数多くもらっていたのだと、今になって思っているというのがあります。
今回の作品では、主人公が理想の親というものを探して行きます。
――― この作品は題名などからして、倉本さんの以前の作品『前略、おふくろ様』と重なる部分があるように思いますが、どんな作品なのでしょうか。
「前略」のようなものを書けないかと、フジテレビの方から言われたというのがまずあります。「前略」はロックだったように思いますが、今回は神楽坂という、演歌でもロックでもなくシャンソンの街というイメージがある場所を舞台に、無くなりつつあるタテの社会、徒弟制度といったものの中の美しさを描きたいと思っています。そういう意味では、料亭の提灯に付いている紋だとか、高橋克実さんが演じる板前が大事に持っている「餞別帖」なんてものは、ある意味このドラマのシンボルとも言えるでしょう。
―――ドラマのテーマを語っていただいたところで、最後に作品に込めた意気込みなどをお願いします。
この作品は、喜劇、人情喜劇です。いわゆるコメディというものです。『北の国から』もそうだったつもりですが、コメディというのは、人間の細かい感情を描いたものであって、感が動くから感動というんですが、そこへ持っていかないと本当のドラマとは言えないと思う。最近、お笑い、ファルスの類の笑いが増えていますが、テレビの品格を取り戻せるような、上質なドラマにしたいと願っています。
文・日置貴之 / 写真提供・フジテレビ








