◎ その後、真打になられて…あの披露宴の時には私もうかがいましたが、帝国ホテルで派手にやりましたねえ。

えぇ、なにを勘違いしちゃったんだかねえ(笑)。

◎ そして今では定期的に毘沙門様で高座を持って頂いているわけですが、ここでいよいよ師匠と神楽坂との係わりについてうかがいましょう。最初の経緯はなんだったのですか。

えぇ、ある落語好きの方、それも前座をひいきにしていた方がいまして、その方が前座さんの同期で会をやらない?と声を掛けてくれたんです。場所はときくと「毘沙門様をおさえてあるから、細かいことはこっちでやるんで、身体だけで来てください」というわけで、三人でうかがいました。これが初めてです。今の三遊亭丈二、三遊亭金也、途中から参加したのが、あの当時は五街道はたごだった桃月庵白酒。最後のほうに参加したのが隅田川馬石かな。そのとき客席で見ていた学生がいまの春風亭柳朝ですよ。

◎ 今の毘沙門様での「菊之丞の会」はそこからずっとつながっているんですか。

いいえ、その間にもいろいろありましてね、いまの毘沙門様での会は、矢来町のビア・バー、ブラッセルズさんとのご縁からでしょうか。あそこは私の兄弟子の古今亭駿菊が「志ん朝師匠の家の近くに、面白いビール屋があるんだよ。店長が落語好きでね。そうなるとオジサンだと思うだろ、これが若いお姐ちゃんでね」と連れてってくれて。それからたまにビールを飲みにうかがってたんです。そこで働いていた男の子が茶館パレアナさんを紹介してくれて。お膳立てをしてくれたんです。これはもう二つ目になってからなので前座の会からはしばらく間が空いているんです。そのパレアナさんでは、それこそお客さんにツバがかかるくらいの近さで演りましたよ。

◎ それまで神楽坂にはご縁がなかったんですか。

なかったですね。でもなにか落ち着いていい街だなと思いましたし、なにより矢来町(志ん朝)が住んでいるところですからねえ、ちょっと緊張しますよ。それに花街だし、落語なども似合うところだろうなと思いますよ。毘沙門様だって面白いじゃないですか。(あの書院は)まるで落語をやるために作ったんじゃないの?って思うくらいでしょ。打ってつけの場所ですよね。でも高座の後ろ開けると仏様があってね。聞いた話ですが、昔は金馬師匠なんかが新作の会をやっていたそうじゃないですか。ウチの師匠に聞いたら「オレも出たことあるよ」なんて言ってましたから。やっぱりメッカなんですよ。神楽坂演芸場というのもあったんでしょ。あれはどの辺だったんですか?

◎ いまの見番の辺りだったそうですよ。神楽坂演舞場と呼ばれたころもあったようですが。

落語協会のカレンダーで(寄席の)番付を出したことがあったそうですが、そこでも神楽坂演芸場はかなり高級というか、格式のある寄席とされていたそうです。そんな話も聞いていますしね。

◎ 一世を風靡したのは柳家金語楼さんですね。この辺に住んでいましたしね。さて、そんな神楽坂に寄せる師匠の想いなんてありますか。

なんでしょう。でもやっぱりこのまま変わらないで欲しいということですかね。わたしは今、浅草に住んでいますがね。まだそんなに経っていないのにどんどん変わって行きますからね。不思議なもので新しいものが建つとね、その前にあった風景が思い出せないんですよ。毎日のようにその前を通っていても、建て変わると全然思い出せなくなっちゃう。これは寂しいことなんだけど…ともかく変わらないで頂戴、という気持ちが強いです。こんな商売をしていて、しかも私が古いものを追いかける性質なんで、変わるところがあってもいいけど、変わらない街があってもいいじゃないかと思うんですね。

◎ このあたりも最近ではデベロッパーが暗躍して、高層ビルが建って景観を損なうようなことが起きていますからね。

ええ、ですから一生懸命、石にかじりついてもやらないと絶対変わってきちゃいますね。京都などはいろいろな条例作るなどの試みをしていますが、ああでもしないとだめなんでしょうね。私、この前水上バスに乗ったんですよ。それも初めての体験で。隅田川から浜離宮まで行くんですが、佃の辺り通るとビルだらけで、本当に似合わないですね。やはりあの辺は軒の低い家がいいですね。

◎ それでは話を替えて…野望、という訳ではありませんが、これからなにかやってみたいことはありませんか。

これは稽古すればできることなんですが、寄席でトリとった時に、10日間ずっと廓噺を続けるとかね。志ん生師匠の十八番(おはこ)十席とか、そういったテーマを持ったものをやってみたいですね。まあtotoでも当たったら、歌舞伎座借り切って独演会とか…当たりませんねぇ。3億あればできそうでしょ(笑)。

◎ やはり師匠は古今亭の噺…志ん生師匠や志ん朝師匠の噺が本筋なんですか。

それがねぇ、変な話なんですがわたしは志ん生師匠の噺をあんまし演っていんないんです。どちらかというと(桂)文楽師匠の噺の方が多いんです。これは例の中学の先生の影響ですね。先生がもう文楽信者だったんです。その影響で、文楽噺が多いんですね。

◎ 僕などは是非圓生師匠の噺などもやって頂けると、と思うんですけれどね。まあ、ちょっと前に所帯を持たれたとも聞いてますし、ますますのご活躍を期待しています。

あれれ、どこから聞いたんですか。まあ自分から話すことでもないので…でも、有り難うございます。6月末には定例の会が毘沙門様でありますから、そちらでまたお目にかかりたいとおもいます

インタビュー:山口則彦  構成・写真:渡部晋也

 

菊之丞 出演情報

【神楽坂毘沙門寄席 ”第7回 菊之丞の会”】

日時:6月28日(木) 18:30 開場 19:00 開演
場所:神楽坂 善国寺毘沙門天書院にて
チケットおよびお申し込みは、Kagul'art - かぐらーと - イベント情報でご確認下さい。
主催 NPO法人 粋なまちづくり倶楽部
共催 神楽坂まちづくりの会

Kagul'art読者プレゼント

今回は菊之丞師匠の手ぬぐいを抽選で5名の方にプレゼントいたします。

ご希望の方はメールにて「菊之丞手ぬぐい希望」と書いて 郵便番号・住所・氏名・電話番号・メールアドレスを明記の上、6月末日までに info@synapswitch.com 宛、メールにてご応募下さい。

当選者には7月15日までに商品を発送致します。

当選者の発表は商品の発送をもって変えさせていただきます。