◎ ところで、今年で3回目となるまち飛びフェスタ「坂にお絵描き」への参加ですが、そのきっかけをうかがいたいのですが
神楽坂との縁をつくった益田さんと
これも不思議な縁でしてね、銀座に「佐人」という緑茶専門の喫茶店があるのですが、そこでまち飛びフェスタのスタッフもされている益田さんと偶然出会ったんです。ご主人が私のことを紹介してくださったのがきっかけです。すると益田さんが「坂道に書いて見ませんか?」と誘ってくれたんですよ。その時、僕がイメージしたのは、イタリアの方で道にお花を敷くお祭り(編集部注:インフィオラータ)でした。ああいった感じのところでちょこっと書くのかな?と思ったんです。神楽坂にも花畑があるんだ、ってね。ところが話を進めると「坂にお絵描き」というじゃないですか。正直、“お絵描き”にちょっと抵抗がありました(笑)。でも神楽坂は好きだから、ともかく見ようという訳でね。

◎ 路上で筆を振るう気分はいかがですか
今年で3回目になりますが、私は書き始めるともうわけわからなくなるんですね。夢中になっていますから、周囲の音なんて書いている時は聞こえません墨の走る音だけしか聞こえてこないです。いかに最後まで務めるか。あれは一つの舞台のようなものですから、そればかり考えています。その気持ちは仕事場でも路上でも変わりませんね。なんでも書いている時の自分は近づき辛いそうですよ。本人はそう思っていないのですが、そんな顔をしているようですね。
◎ 路上で書くことで、ご自身に変化はありましたか。
なにより度胸がつきましたね。一発勝負の心構えと集中力ですねが必要なので、皆さんの前で書かせてもらうための強さを教えてもらいました。こういったパフォーマンスは全く経験が無かった訳ではありませんが、神楽坂の路上は他所とは全く舞台が違います。しかも毘沙門様の前ですから、罰が当たらないようにしないとと思って(笑)。なにかわからないエネルギーをもらっているような気がします。結構私はお寺や神社とのお仕事が多いんですね。ご先祖がやれやれーと旗でも振っているのか、さっさとお迎えが来てしまうのか(笑)。話も自分からというより、向こうから来ることが多いですから。
◎ ところで、最近の子供たちはあまり字を書かなくなっていますよね。村山さんはワークショップなどで教える機会もあるそうですが、そういった「書かない子供たち」に対しての危機感はないですか。
文字を覚えるというためは、その構造を解体することが必要なんです。今は瞬間だけは鋭いですから、それだけなので絵のように見てしまうんですね。だから話は出来てもそれが文字にならない。その距離感は物凄く感じますね。子供たちに聞いたことがありますが、なぜワープロで「出せる」文字が「書けない」かというと、聞くとどこから書いていいかわからないというんです。それで覚えようとはしないんです。しかも辞書も持っていない学生が増えているようですね。すでに脳の組織が変わっているんじゃないかと思います。
でもね、この間、東京国際フォーラムで子供たちへのワークショップをやったのですが、そこでは文字が持っている意味やストーリーを話してあげたんです。するとね、子供たちは物凄く食いついてくるんです。話しているうちに、文字ってこんなに楽しいんだねというんです。それが書きたいという気持ちをかき立てて行くわけです。

◎ もっとも書かないのは大人も同様で、人のことは言えません。この原稿だってワープロで打つでしょうしね(笑)。
大人のための、しかも有る程度社会的な地位のある人へのワークショップをやったこともありますよ。私は手を取って一緒に書くような教え方はしません。そのかわり声を掛けて、怒ったり励ましたりして書くんです。偉い人でも容赦しません。そうすると汗びっしょりになって、全身を使って書き上げますから健康にもいいんです。そもそも文字を書くことは脳下垂体を刺激するんです。達人は食事をしながら文字を書くといいますが、あれは本当のことなんです。
◎ それでは思いっきり書くことですね。ひょっとすると大きな文字に挑戦するのがいいのですか?そんな大胆なことは、字が上手くならないとしてはいけないような気がしてしまうのですけど。
いいえ、書いていいんです。まずね、大きなものを書くことから始めるべきですよ。ええ、小さなものばかり書いていると大きなものは出来ませんから。筆なんて100円ショップで買ったもので充分です。下手なひとに限って高価な筆を使うものです。それは健康にもいいですよ。世界も違ってきますし、墨の流れと走らせる快感はたまらないものです。字も覚えますしね。
◎ そういうことなら「坂にお絵描き」は絶好の機会ですね。村山さんの傍で思いきり書いて見ましょうか。
そうです。是非筆を持って「坂にお絵描き」に集まってほしいですね。
取材・文・写真/渡部晋也
「坂にお絵描き〜700mの坂道がキャンバスになる日!!」
11月3日(土・祝) 午後1時から3時半(雨天中止)神楽坂通り全域にて。
神楽坂通りの上から下まで敷きつめられたロール紙に子どもから大人まで、誰もが自由にお絵描きを楽しむ壮大なイベント。
村山朝偉さんの古代中国文字大筆描きのほかにも、大道芸やマジックショウ、和太鼓、ジャズバンド演奏にチアガールズのパフォーマンスなど、数々の路上イベントがお絵描きを盛り上げます。
プロフィール
村山朝偉(むらやま・ともひで)
手描き友禅染色・硝子工芸作家。1944年、新潟県生まれ日本を代表するエンターテイナーの舞台衣装を数多く手がける傍ら、宮内庁御用の御献上品を制作。硝子工芸では日本工芸会の正会員として作品を多数発表するが、さらに甲骨文字を出発点とした、人間の知恵と生命に関わる原始の魅力を、墨アートとして制作。国内外から注目を集めている。現在も夕刊フジでの連載や各地でのワークショップなど精力的に活動している。







